【感想】頂はいつも遠くに 鹿島アントラーズの30年 寺野典子

サッカー

頂はいつも遠くに 鹿島アントラーズの30年/寺野典子【1000円以上送料無料】

価格:1,870円
(2021/11/28 21:51時点)
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序章 コロナ禍
第一章 初勝利
第二章 ジーコ
第三章 紅白戦
第四章 ゴールデンエイジ
第五章 ベンチャー企業
第六章 三連覇
第七章 公平と平等
第八章 鹿島のFW
第九章 アカデミー
第十章 2018
第十三章 ノンフットボールビジネス
終章 それでも鹿島は

「いやあこの本すごいな」。読み終えて思った。

本書は、単に結果やデータを基に論じられているのではなく、これまでに在籍した選手、スタッフ、対戦した選手などへのインタビューを基に、当事者たちの言葉言葉で論じられている。筆者は、Jリーグや日本代表について執筆するライターだが、本書は2018年より3年に渡って取材を行い、執筆された。クラブ創設30周年を振り返るにあたり、最適な1冊となるだろう。

今は便利な世の中で、Youtubeを探れば過去の映像を探ることができる。読みながら、これはどんなシーンだったけ、と思い、何度か本を読むのを止めて、映像で振り返った。

そして本に戻り、その選手の言葉を読む。この目と心に訴えかけてくる生々しさは、本書だからこそできるのだと思う。

勝つことへのこだわり

私は、他サポーターからかつて、「リーグ年間3位でブーイングが起きるのは贅沢」と言われたことがある。

なぜ、鹿島アントラーズはそこまで「勝利」に貪欲なのか

30周年のメモリアルイヤーである2021シーズンを終えようとしている今(2021年11月28日現在、残すはリーグ最終節のみで現在4位)、タイトルの可能性はすでにない。

2021年11月27日ホーム最終戦後のセレモニーで、キャプテンの三竿健斗が変えてはいけないもの、として述べた「結束すること、仲間のために戦うこと、タイトルへのこだわり」はまさに本書で小笠原満男や内田篤人が語っていた内容と重なるものがあった。

人が変われば組織が全然違うものになってしまうことはよくあることだと思うが、かつての「強い鹿島」を築きあげた選手達の考えや姿勢がこうやって下の代に引き継がれているのは本当にすごいことだと思う。

その一方で、現代の変化スピードは早い。10年先の世の中でさえ、どうなっているか想像するのは難しい世の中である。

常勝軍団」が過去のモノになりつつある今、チームとしても、選手としても、スタッフとしても変化を求められるのは当然だ。しかし変化には痛みを伴う。

「すべては勝利のために」を掲げ、勝つか負けるかしかない不確定要素の大きい勝負の世界において、30年間「勝つこと」にこだわり続けてきたのが鹿島である。

鈴木満が著書のなかで「過去の30年間で20個タイトルを獲れたけど、日本の三大タイトル、ACLを加えると30年で100を超えるタイトルがあるなかで、2割しか勝っていないということ。8割は負けている。僕らにとっては、そのことのほうがデカいから。満足とか達成感なんてないんだよ」(本書、369頁)と言っているように、勝つことへの貪欲さは、負けた悔しさ、痛みから生まれているのだ。そしてその痛みをパワーに変えていける選手が鹿島の選手なのだろう。

選手達は練習の時から100パーセントの力を出すことを求められ、手を抜くこと、負けることは許されない空気感を作り出す。

求められる「変化」は、チーム内に不安定要素もたらすが、決してそれが「退化」ではないはずだ。そしてその変化に伴う痛みをどれほど許容できるのかどうかが、選手、スタッフ、サポーターにも今、問われているのかもしれない。

著書を読み終えて考えたこと

1996年生まれの私にとって、90年代のアントラーズの活躍は知らない。

市内のイオン(幼い頃はジャスコと読んでいたので、イオンと呼ぶにはどこか違和感を感じる。)には当たり前のように「ジーコ広場」があったが、そこは単に休憩場所の「ジーコ広場」であって、ジーコがどういう人物で、なぜそこまで英雄であるのかはっきりとは知らない。

生まれた時にはすでにカシマスタジアムがあったし、鹿嶋にJ1のチームがあり、スタジアムがあることがなぜそんなに奇跡的なことなのかはっきりとは知らない。

カシマスタジアムから2kmほどの距離にある中学・高校に通っていたが、「カシマスタジアムに行ったことない」、「鹿島アントラーズの試合見たことない」と言う友人は少なくなかった。

鹿島アントラーズが3連覇した頃は、当時中学生だったので、その盛り上がりに便乗して何度か学校帰りにスタジアムに寄ったこともあるが、その後の大学受験、上京などで鹿島アントラーズへの熱は一旦落ち着いてしまった。

再度、鹿島アントラーズを強く意識し始めたのは就職して社会人になり、大阪で働き始めた頃からである。その時初めて、カシマスタジアムが「聖地」と呼ばれていることを知った。

今までは身近すぎて、「鹿島アントラーズ」の魅力にそこまで気づいていなかったのかもしれない。

故郷を離れて初めて、外から「鹿嶋市」や「鹿島アントラーズ」を客観視したことで、人口6万人の街に「鹿島アントラーズ」というプロのサッカーチームが存在し、しかもJ1で優勝争いをしていることがいかにすごいことなのか改めて認識させられた。

幼い時からサッカーは見ているけれど、オフサイドの意味は最近ようやく分かったところだし、詳しい戦術は全然分からない。

だけど鹿島アントラーズが勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。それはサポーターだから。

また満員のカシマスタジアムで勝利を見たいし、肩を組み合ってオブラディオブラダを歌い合いたい。そして優勝する姿を見たい。だけど、強くなるために耐えなければいけない時もある。

最近は選手個人がSNSをやっているいるし、その怒りを直接選手に伝えることもできてしまう。だけど、それはサポーターのすべき「サポート」ではなく、「誹謗中傷」である。そんなことはやめて、スタジアムに行って、手拍子を送る、また以前のように声を出せるようになれば声援を送り、後押しをする。

そんなサポーターが増えてほしいし、自分もそうありたい。

だから私はこれからも鹿島アントラーズを応援し続ける。

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